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アマプラ版『スカーペッタ』なんでこうなった…

アマプラ版『スカーペッタ』なんでこうなった…

先にはっきり申し上げておきますが、この記事はタグにもあるように、ネタバレ全開の記事です。
ドラマや書籍を未見・未読で、展開を楽しみにしている方は読まないほうが身のためです。


パトリシア・コーンウェルのベストセラー『検屍官』シリーズが、ついにドラマ化。 このニュースを聞いたとき、かつて夢中でページをめくっていた身としては「おお、ついに!」と、胸をときめかせました。
そして Amazon Prime Video(アマプラ)が出資して、あのホラーのブラムハウスと共同制作だと…⁉︎ 予算もバッチリで、これは期待しかありません。

と思っていた時期が、私にもありました…(遠い目)

主演はニコール・キッドマン。そして、サイモン・ベイカーにジェイミー・リー・カーティス、ボビー・カナヴェイルまで揃えた超豪華キャスト。
…え、なんか皆さん、年齢が… 歳、とり過ぎてません?
それに、ケイ・スカーペッタをはじめ、微妙にイメージが合わないような…

嫌な予感は、裏切られませんでした。
そこにあったのは、私が愛した「科学捜査ミステリー」ではなく、**家族が四六時中ののしり合う「バイオレンスな昼メロ」**でした。

一体なぜ、こうなった?
原作シリーズを最初から読んでいた愛読者、しかし途中離脱組(11作目『審問』の途中で挫折)の視点から、ドラマ版に全力でツッコミを入れてます。

まさかの28年後の世界

原作シリーズの離脱組は、私のように10作目あたりで脱落したひとが多かったのではないでしょうか?
愛するベントンの衝撃の死。そして、その後のぐだぐだ。
傷心のうちに半ば無理やりパリに飛ばされたスカーペッタ、そして謎の狼男(?)からの脅迫。意味がわかりません。Xファイルみたいなネタがぶっ込まれて、リアルな検視ミステリーからどんどん離れていって、ついていけなくなった……それが当時の私です。

21世紀を前に時計が止まっていた私にとって、ドラマ第1話は衝撃の連続でした。

舞台は現代

いきなり電話で叩き起こされるスカーペッタ。なんですが…スマホ? 一作目の舞台は1990年代だよ、ね?
これが混乱の第一歩でした。

わざとらしく映り込む橋桁の "2026" の文字。あ、やっぱ舞台は現代なのね…
そしておもむろに登場するマリーノ。え、君がマリーノ?

ていうか、痩せてるじゃん。なに?マリーノ、ダイエットしたの?
ていうか、マリーノ背縮んだ?あ、ちがうか。ニコール・キッドマンがスカーペッタ役だから、スカーペッタがデカいのか…
ていうか、髪の毛ふさふさじゃん。いやこれ、カツラ?ねぇ、カツラなの?

ルーシーが黒くなる

ルーシーは赤毛翠眼の白人で、誰もが振り返る美人っていう設定だったはず。 しかし、パートナーの墓参りに来たと言うルーシーは、どうみても黒い。黒いんです。
どアップで映される墓碑銘のパートナーの名前がジャネットっていうのは、元々原作でもルーシーはレズの設定でしたし、あの付き合ってた感じの娘死んじゃったんだ、位の感慨で、それはまあ良いんですけど。

私は人種差別主義者じゃないし、黒人だからダメとかは言いません。 とはいえ、原作キャラを人種まで変えちゃってるってどうなのよ。 そばで見ている母親のドロシーは白人(ジェイミー・リー・カーティス)だから、ハーフって設定なんでしょうけど。

アマゾンあるあるかもですが、ポリコレ設定盛り過ぎますよね。

ベントンが生きてる!

ルーシーの誕生パーティーの最中にさらっと帰ってきた男。 “Benton just got here in time...”って、え?
第9作『業火』で非業の死を遂げ、ファンが何年も喪に服したあの男が、ピンピンしている?
いや、それどころかスカーペッタと結婚してるし。 これどういうこと?

後から調べてみると、原作小説でも「実は証人保護プログラムで生きてました、てへぺろ」という後付け設定でちゃっかり復活を遂げ、結婚していたらしいのですが。
いやいやいやいや、それ無理でしょ。犯人に焼き殺された後、スカーペッタさん自分で徹底的に検屍したよね?殺害現場までいったよね? 確かベントンの歯科記録、完全一致してたよね? 生きてる訳ないじゃーん。

マリーノとドロシーが夫婦、だと?

更に追い討ちをかけるかのように、誕生パーティーに参加しているマリーノとドロシーが熱いキス?
え何、この二人、なぜに娘の前でディープキス始めちゃってるの?えええ、二人は結婚したの?

マリーノをめちゃ嫌っていたドロシーと、ドロシーを軽蔑していたはずのマリーノがくっつくという超展開は、もはや正気か?と言うしかありません。
接点すらまともになかった性格最低のふたりがなぜか夫婦で、しかもスカーペッタ・ベントン夫妻と同じ敷地に住んでるという。

ていうかさ。マリーノ、君はケイに惚れててゾッコンだったよね?
妹はハイスペ過ぎてやっぱ無理だったので、姉に行きまーす って、それでいいのか君は?

第一話から怒涛のごとく私に襲いかかる疑問符の嵐。
「これ本当に私の知ってる検屍官シリーズ?」という強烈な違和感とともに、ドラマは開幕しました。

キャラ崩壊列伝

ドラマになって帰ってきた『スカーペッタ』の主要登場人物たちは、原作離脱組の私からみると、名前だけ同じの別人クラスに変貌を遂げていました。

キャラ変ケイ・スカーペッタ(ニコール・キッドマン)

私が覚えている原作のケイは、ブロンドの髪をなびかせ颯爽とした北イタリア系の小柄で肉感ボディーの美人です。
仕事はバリバリ、でも休日は小麦粉こねて自家製パスタを作り、ワインを飲んでストレス解消。 そんな生活感のある 大人の女性の色気が漂う美人 だったんです(大事なところなので太字にしました笑)。
粗野なマリーノがこっそりスケベ心を抱いたり、ベントンがクラっときたりする、そんな「女」としての存在感があるはずなんですよね。

ドラマ版のニコール・キッドマンは、背も高く北欧系を思わせる色白で 氷のように冷たく研ぎ澄まされた美人 でしょうか。
美しすぎて人間味が薄く、なんだか生活感も希薄なイメージです。

そもそもニコール・キッドマンは背が高すぎです。 原作では巨漢のマリーノとの凸凹コンビっぽいのがよかったのに、ドラマでは二人並んで立つと、ほぼタメ張ってます。 マリーノがうっかりエロい目で見ちゃう対象というよりは、触れたら切れるカミソリのような近寄りがたい怖さを漂わせています。

性格もガラリと変わっています。原作では常に冷静沈着。めったに感情を爆発させない完璧主義者のはず。
ところがドラマでは、やたらと声を荒らげたり下品なFワードで悪態をついたり。上から目線で自己中なのも鼻につきます。 あまりお近づきになりたくないタイプの、フラストレーション溜まり過ぎのおばさんになってしまっています。

イケおじマリーノ(ボビー・カナヴェイル)

私の記憶にある原作のマリーノといえば、ビール腹で脂ぎったちょいハゲの巨漢
常に汗をかき、シャツには食べこぼしのシミ。安いタバコを四六時中ふかすチェーンスモーカー。 口が悪くて、女性にも同性愛にも最初は偏見丸出し。日本でいえば昭和感の漂う残念オヤジだったはずなのです。
「不潔でモテないけれど、実はプロフェッショナルで凄腕刑事」 あの妙にキャラ立ちしたおっさんが好きだったんですよ。

ドラマ版を演じるボビー・カナヴェイルは、高身長ですが筋肉質でガッシリした体格。 髪(!)もしっかりあり、どちらかというと ワイルドでセクシーなナイスミドル です。

「不潔な男がエリート女性に片思い」という独特の緊張感がなくなってしまいました。 ヨレヨレのシャツと安物のネクタイとか、労働者階級の哀愁が綺麗に消えて、高級エステートで着飾ってワインを飲んでそうな「シュッとしたイケメン」になってしまった。
コレジャナイ感がハンパありません。マリーノじゃない。ただのカッコいい相棒です。

また、28年前の回想パートでは、ボビー・カナヴェイルの実の息子ジェイク・カナヴェイルが若き日のマリーノを演じています。
ボビーの遺伝子を受け継ぎつつ若さと爽やかさも加わって、これはこれで人気がありそうです。
当然のように腹も出ていませんし、もはや「最近ダイエットに成功しました!」とかいう話ではありません。若い時からモテモテだっただろお前。

即落ちベントン(サイモン・ベイカー)

『メンタリスト』のパトリック・ジェーン、あのお茶目な天才役のサイモン・ベイカーがベントンを演じています。 (個人的には『プラダを着た悪魔』でアン・ハサウェイをたぶらかしたイケメン作家のイメージが強いのですが)

原作からはキャラクターも激変しました。原作では「銀髪のFBI天才プロファイラー」というキャラ立ちした風貌なのに、金髪の煮え切らない重苦しい男に。
もしこれがアニメの人気キャラで、原作がシルバーヘアだったのを金髪に変えたりしたら、製作者はファンに殺されますよ?

出身も、ニューイングランドの金持ちの御曹司で超エリートって設定だったのに、なぜか南部訛りを話す地元出身(?)風に変えられちゃってるし。
知的でエレガントな感じが台無しです。

また、原作のベントンは奥さんも子供もいる既婚者でした。だからこそケイとの関係は、お互いがその知性と業務上の高度な知見を認め合い、惹かれながらも節度あるプロフェッショナルな距離感を保っていた。
いわば「禁断の恋」としての緊張感が魅力だったのに、ドラマ版では最初の出会いからしてお互い相手にメロメロです。 まだ最初の事件も解決していないうちからルーシーの目の前でキスを貪る恋仲になって、原作の「大人の節度」は最初からどこかに吹っ飛んで消滅してしまいました。
お前ら、がっつき過ぎ。

いろいろ黒いルーシー(アリアナ・デボーズ)

私が覚えているルーシーはそもそも(さっきも書いた通り)白人です。もう見た目のイメージからして全然違っちゃってます。

人種が変わったのはまあ、この際大人の事情として置いておくにしても、ルーシーは生意気だけど優秀、13歳にして莫大な資産を築いた天才ハッカー。 若くしてFBIアカデミーにリクルートされ、ATFのエージェントとしても活躍し、ヘリの操縦から銃器まで何でもこなす武闘派の「自力で無双する天才」だったはず。

ところがドラマでは、目下ケイの庇護下にあり、パートナーの死から抜け出せないメンタルよわよわの危うい存在になっちゃってます。 アクティブな面影はほとんどなく、部屋にこもって亡くなった妻ジャネットのAIを自作して、ひたすらAIと会話し続けるという病みキャラクターに。
結婚までした最愛のジャネットの死が、彼女をこんなにも繊細なキャラに変えてしまったのでしょうか。 身も心もダーク過ぎます…

ヒス女ドロシー(ジェイミー・リー・カーティス)

原作のドロシーは確かにトラブルメーカーの困った姉でしたが、あくまで物語のスパイス的に時々出てくるキャラ。 ヒステリックというほどではなかったし、そもそも出番が少なかった。

ところが、ドラマ版では主演級の存在感に肥大化してます。ケイと激しく罵り合い、今や旦那のマリーノを振り回し、屋敷を占拠し、とにかくギャンギャンと騒ぎ立てる。
最悪です。間違いなく 本ドラマ最大のストレス源 でしょう。

正直に言います。幾度となく再生を止めたくなりました。

シリアスなサスペンスが一転、彼女が画面に現れた瞬間にカオス化して、ただの騒がしいファミリードラマに変わっちゃうんですよね。
制作側はちょっとしたユーモアの味付けのつもりかもしれませんが、控えめに言って「張りつめた緊張感を台無しにしている」、ぶっちゃけ「やりすぎ」です。

これ、ジェイミー・リー・カーティス自身がこのプロジェクトのエグゼクティブ・プロデューサーなのが関係してるのでしょうか。
原作者コーンウェルとは長年の友人で、映像化を何年も前から推進してきた「生みの親」の一人、らしいです。
コネも金もあるエグゼクティブ・プロデューサーなら、自己中のシナリオ改変も思いのままですよね。 監督も「もう少し抑えめに」とは言えなかったのかも知れません。

地獄のシェアハウス — 罵り合いながら住んでます

ドラマの舞台は、元々ベントンのものらしいバージニア州に構えたゴージャスなお屋敷です。

  • 本館: ケイとベントン夫妻が居住
  • 別ウイング: ドロシーとマリーノ夫妻が同居中
  • 離れのゲストハウス: ルーシーのプライベートルーム

検屍官ケイ、FBIプロファイラーベントン、ベテラン警部マリーノ。姪の天才ハッカー・ルーシー。(おまけでケイの姉ドロシー) 私が好きだった原作の魅力は、個々に独立したプロフェッショナルたちがそれぞれの現場でプライドを持って仕事を完遂する、ストイックなかっこよさだったのに。
ドラマではその全員がなぜか身内になって一つ屋根の下(正確には同じ敷地内ですが)に大集合です。 そして、互いに顔を合わせるたびに汚いFワードを連呼しながら罵りあうとか。 もはや司法検屍ミステリーではなく、どろどろのホームドラマかシットコムです。 それも sitcoms ではなく shitcoms ですね…

ドロシーがギャーギャー騒ぎながらキッチンに怒鳴り込んでくるたびに、「マリーノ、頼むから彼女をベッドに縛っとけよ!」と言いたくなる。
ていうか、こんだけ関係拗れまくってるんだから、せめて一緒に食卓囲むの止めたらどうなのよ? まずはそこからでしょ…

誰がこの「面倒臭い色情狂気味のおばあちゃん」のお世話係になるのかという、まさにババ抜きか老人介護問題か、という良くわからない切り口のドラマなのかもしれません(違)

ブラムハウスの本気

ここまで散々ツッコんできましたが、個人的には褒めたい部分もあります。
それは、リアルすぎる死体描写。 検屍シーンの凄惨なリアリズムは、ブラムハウスの本気を感じました。

制作スタジオのブラムハウス(Blumhouse Productions)。
『パラノーマル・アクティビティ』『ゲット・アウト』『M3GAN/ミーガン』、そして『ハロウィン』シリーズを手がけた、ハリウッドのホラー製造工場と呼ばれるスタジオです。

このドラマ化は、そもそもジェイミー・リー・カーティスとブラムハウスの『ハロウィン』繋がりから生まれたプロジェクトみたいです。
ブラムハウス版『ハロウィン』(2018年)3部作で復活を遂げたジェイミーが、プロデューサーのジェイソン・ブラムと強い信頼関係を築き、そこから「スカーペッタをやろう」となった。
第1話・第2話の監督デヴィッド・ゴードン・グリーンも、まさにあの『ハロウィン』3部作の監督です。

おかげで、検屍シーンのクオリティが尋常ではない です。

遺体の喉の切り口、剥がされた皮膚。損壊された死体を舐めるようなクローズアップ。 おっぱいも下(しも)の毛も丸見えですが、おかまいなしです。
「科学的で冷徹な視点」から遺体を捉え、単なるグロテスクさを超えて、ゾッとするようなリアリティを生んでいます。
Amazon Primeでも当然のR指定。ストリーミングとはいえ、テレビドラマの限界を攻めてます。

「死体は証人」というケイ・スカーペッタの信念を、視覚的なインパクトで強烈に叩きつけてくる。 ホラー映画で培った技術が、法医学の描写にぴったりハマっています。 ブラムハウスの面目躍如といえるでしょう。
ここだけは、原作の持っていた「死者に向き合う覚悟」の欠片(かけら)が残っている気がします。

ただしこのドラマは、あくまでホラーではないので、ホラー特有のオシッコちびるような恐怖の演出は基本ありません。
そのため、ホラー苦手なひとには無理すぎる映像である一方で、ホラー大好きで大体観てるってひとには物足りないという、微妙な半端感が漂うドラマにもなってしまいました。

前編まとめ: 3話視聴で感じた絶望感

3話まで観た時点での感想をまとめると:

  • キャラが全員別人 — 歩く心臓発作、マリーノを返せ
  • 家族がうるさすぎ — 職業ドラマのはずがぐだぐだの昼メロ展開に
  • 殺人現場と検屍シーンは良き — ホラーひと筋、ブラムハウスの本気

ちなみに今はまだ、ドラマシリーズ全8話中、第3話までしか視聴していません。 が、3話の時点でさらに嫌な予感しかしません笑
ケイが好きすぎるマリーノを巡って、嫉妬に狂ったドロシーがさらに暴走する未来しかないとか、もはや過去の冤罪疑惑とかどうでも良くなる勢いです。

気力があれば完走して、全話視聴後の感想も記事にします。


あと、マジで連続殺人犯が次はドロシーを縛り上げてくれる展開を心底期待しています…